ドイツにおける博士号、博士課程について

phd_ingermany

今回の投稿では、ドイツにおける博士号の扱いはどういった感じか、ドイツの大学の博士課程ってどんな感じなのか、といった疑問を解消していきます。

ドイツの大学でポスドクをされている堺さんと対話をしながら、2人の知識・経験を共有していきます。

ー堺さんの簡単な自己紹介ー

堺さん

カールスルーエ工科大学で博士号を取得。

現在はミュンヘン工科大学の研究者(ポスドク)。

専門は数値流体力学(CFD)。

ドイツにおける博士号の扱い

やま

ドイツでは、博士>修士>学士という序列が強いですよね。社会的な博士の認知度が高いので、博士号を取得してマイナスに働くことはほとんどないように思います。それもあってか、ぼくのまわりの学生は博士号取得に対して前向きです。

一方、日本で学歴と言えば、基本的にどこの大学を出たかになりますよね。一般の人からすると、「博士号を持っています」よりも「東大出身です」のほうが「おー」となるんじゃないでしょうか。

堺さんはドイツにおける博士号の扱いについてどう思われますか。

堺さん

そうだね。ドイツでは博士の社会的な認知度が高いし、それなりに敬意を払われているなと感じる

ドイツの大学間には序列みたいなものがあまりないから、どこの大学で取ったかに関わらず、学位には一定の敬意が払われている様に感じるね。大企業の管理職になると博士号を持ってる人が多いけど、日本みたいな学閥意識はそんなにないと思う。

自分の名前に Dr. (博士) がつくと、良い意味でも悪い意味でも扱いが変わったりするよ。

たとえば、ドイツの墓地には Dr. 〇〇 (〇〇博士) と掘られた墓標がある。そういうのを見ると、ドイツ人って学歴好きだなって思う。日本だと、〇〇博士って掘られた墓標はまず見ないよね(笑)。

それから、家や部屋の表札が Dr. 〇〇になっていることもよくある。これも日本ではまず見ないよね。

少し話はそれるけど、ドイツ人の権威、学歴好きを象徴するような話がもう一つある。

実は、一世代前までは教授の奥さんも「教授」と呼ばれてたみたい(墓標にもそう彫られてる)。今の時代の感覚だと問題になるけど、当時は普通の事だと受け入れられてたみたいだね。

ドイツの大学の博士課程について

やま

ドイツの大学の博士課程では、雇用されると給料が出ますよね。研究分野にもよりますが、卒業後にくいっぱぐれることもあまりないと聞きます。なので、ドイツの学生は博士課程に進みやすいのではないでしょうか。

(研究室によって給料や業務内容、博士号を取得するまでの期間が変わります。すべては教授次第といった感じです。それから、ドイツの大学では主にIndividual doctorateとStructured PhD programsの2つがあります。)

給料に関しては、以下の2つの記事がわかりやすくまとめてくれています。フルタイムで働けば、1年目から月に3500€ほど (手取りなら2000€ほど) もらえる感じですね。

参考 PhD, Postdoc, and Professor Salaries in GermanyAcademic Positions 参考 What is the average pay for PhD candidates in Germany?Quora

堺さん

そうだね。ぼくは給料をもらいながら、Ph.D生をやっていた。契約内容にもよるけど、ぼくの場合は研究をしっかりやっていればOKって感じだったね。

それから、企業と契約を結んで博士論文を書くこともできる。その場合は、研究しながらその会社に自分を売り込めるよ。でも企業秘密が関わったりするから、学会で発表できる内容に制限がかかる。そのへんは一長一短だね。

それに対して、日本の大学の博士課程では給料はもらえないことがほとんどだね。日本学術振興会からお金 (月20万円) をもらうこともできるけど、社会保障費とかはそこから払わないとだめだよね。しかも、みんながみんなそうやってお金をもらえるわけじゃないし。

やま

なるほど。

ぼくの中ではドイツの学生は博士号取得にわりと前向きなのに対し、日本の学生は博士課程を敬遠している印象があります。

ここにそれを裏付ける資料(人口100万人あたりの学位取得者数)があるので、少し見てみましょう。

参考 科学技術指標2016、調査資料-251、2016年8月科学技術・学術政策研究所

日本における学士号取得者数は2008年、2016年ともに4000人超えです。一方、ドイツにおける学士号取得者数は2008年が約1500人、2013年が3000人弱となっています。

比較年度が違うので一概には言えませんが、学士号取得者数の割合は日本のほうが高い傾向にあります

日本における博士号取得者数は2008年、2013年ともに100人を少し上回るほどです。一方、ドイツにおける博士号取得者数は2008年、2013年ともに300人を超えています。

統計年度が少し古いですが、博士号取得者の割合はドイツのほうが高い傾向にあります

2つの統計から、ドイツの学生が博士号取得に比較的前向きなのに対し、日本の学生は博士課程を敬遠していることが推測できますね

堺さん

そうだね。日本の学生 (とくに人文・社会科学系の学生) は学士号を取得した後、すぐに就職するんだろうね。理系の学生なら修士まで進むことが多いけど、博士課程はやっぱり敬遠されているんじゃないかな。

結局のところ、ドイツでは博士課程に進学して博士号を取得するメリットがあるけど、日本ではそれがほとんどないってところに帰着するよね (社会的な地位とかいろいろ)。