理系学生のための留学の手引き [留学経験者からのアドバイス]

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理系学生留学をするメリットって何?
留学に興味があるけど何から始めたらよいかわからない。

といった疑問を解消していきます。

留学をする意義とは

よく世間では、“留学してグローバル人材になろう”とか、“留学すれば就活に有利”、“理系学生こそ留学・英語”などと言われますね。

実際、英語ができる人材は今の日本で不足していますから、留学・英語に注目が集まるのはごくごく自然なことです。

とくに理科系の人材であれば、英語が少しできる/留学経験があるというだけでかなり注目されます。

では留学をする意義というのは、“グローバル人材になる”や、“就活を有利にする”といったところにあるのでしょうか

少なくともぼくは、留学をする意義はもっと別のところにあると思っています。

ここでは、ぼくが留学によって得たもの・気づいたことを紹介しながら、留学をする意義について考えてみたいと思います。

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他国の常識を知ることができる

留学をすると、他国の常識(その国の人の考え方や価値観など)を知ることができます

たとえば、アメリカやドイツには新卒一括採用なんてものは存在しません。ポジションごとの通年採用が一般的で、初任給は自分の専攻やスキルによって異なります。

また、博士号の社会的な認知度は高く、給料にもそれが反映されています。さらに、“何歳で〇〇すべき”といった考え方も一般的ではありません

これだけでも、日本とは全く異なる世界が見えてこないでしょうか。

異なる考え方や価値観というものは、自分に新しい視点を与えてくれます。そして、それまで自分が当たり前だと思っていたことに、疑問を持てるようになります。

留学先の国と日本を比較できる

日本と留学先の国の違いが見えてくると、今度は違いを比較できるようになります。ここでは一例として、日本とドイツを比較してみたいと思います。

日本

インフラが整っている…電車や公衆トイレなど

消費者としては便利…年中無休のコンビニやスーパーの存在。質の高いサービス。

新卒一括採用…初任給は専攻やスキルによらずほぼ固定。基本的に上司や職場を選ばずに就職するので、就職前と後のギャップが激しいことも。

働く側としてはわりとつらい…質の高いサービスが求められる。休みもとりづらい。

ドイツ

インフラは整っているほう…電車の遅延が目立つが

消費者としては不便…スーパーが夜8~10時に閉まる。配達業者のサービスがひどいなど

長期のインターン⇒就職という流れが一般的…インターンの間は安月給。上司や職場を知ったうえで就職するので、就職前と後のギャップは小さい。

働く側としてはわりと楽…求められるサービスの質はそこまで高くない。有給がとりやすい。

このような感じで、日本と留学先の国の生活・働き方を比較すると、それぞれの国の長所・短所がわかります。

そのうえで、長所・短所と自分のやりたいことを照らし合わせながら、自分によりあった選択をしていけるわけです。

マイノリティとしての生活経験

海外に行くと、ぼくたち日本人は必然的にマイノリティの立場におかれます。言葉や文化の違いから肩身の狭い思いをする、そんなことは日常茶飯事です。現地の生活にうまく馴染めない自分に、がっかりすることもあります。

そういった意味では、マイノリティとしての生活経験はぼくたちに別の視点を与えてくれます。

今までの自分の行動を顧みるよい機会にもなりますし、他人(たとえば、日本にいる留学生・外国人労働者)に対する寛容さにもつながります

今の日本は外国人労働者を積極的に受け入れていこうとする流れに乗っていますから、マイノリティの人への理解・対応はこれから重要になっていくでしょう。

ちなみに、MITの大学院に留学された小野さんも、ぼくと同じようなことを述べています。

マイノリティの視点からでなくては見えない世界がある。マイノリティの立場でしか経験できない苦労があり、マイノリティの人にしかわからない辛さがある。それを経験し、克服することで、人はより大きな自信を手にし、同時により優しくなれるのだと思う。

宇宙を目指して海を渡る MITで得た学び、NASA転職を決めた理由より」

理系学生におすすめしたい留学

交換留学

交換留学とは、大学間の協定によって行われる留学のことです。留学期間は半年~1年が一般的です。

交換留学に行く際は、基本的に自分が今通っている大学に学費を納めます。そのため、一般に学費が高いといわれるアメリカやイギリスの大学を留学先に選んだとしても、無理なく留学することができます。

また、交換留学は奨学金制度が充実しています (奨学金一覧は下)。うまく奨学金を勝ち取ることができれば、お金をほとんどかけずに留学することができます。さらに、留学先の学校が日本人ばかりなんてこともありません。

応募の段階でTOEFLやIELTSのスコアを提出しなければなりませんが、しっかり対策すれば大丈夫です。

交換留学の短所はほとんどありません。強いて挙げるとするならば、卒業が1年遅れてしまうかもしれないことです。

ただ、近年では留学の社会的認知度がよい意味で高くなってきています。そのため、学年が1つズレることはそれほど問題にはなりません。就活などでも、おそらくプラスに見られることのほうが多いはずです。

以下、交換留学用の奨学金一覧です。

正規留学(学位留学)

正規留学とは、海外の大学(院)に進学して学位を修めることになります。そのため、交換留学とくらべると、難易度が格段にあがります。

まず出願や渡航準備が大変です。日本語では出願に関する情報がほとんど出てきません。学科やプログラムによっては、前例がないこともあります。

それから、高い英語運用能力が求められます(英語以外の言語でも同様)。プログラムにもよりますが、IELTS 7.0 や TOEFL 100前後は普通に要求されます。もしアメリカの大学院に進学するのであれば、GREも受けなければなりません。

正規留学は敷居が高いです。その一方で、現地の学生やほかの国からの留学生とともに勉学に励む経験など、実際に得られるものが多いです。

また、大学(院)卒業後、留学先の国に残って働くことができる可能性が高くなります(学部卒と比べて)。たとえば、ドイツでは大学(院)を卒業すると、仕事探し用のビザ(ぼくの知る限りでは1年半)を取得することができます。

“準備は大変だけど、ものすごく成長できる”、それが正規留学です。

以下、正規留学用の奨学金一覧です。

これら以外にも奨学金はたくさんあります。しっかりと調べましょう。

海外の大学における修士課程・博士課程の仕組み

アメリカ

アメリカの大学の修士課程(master)では座学が中心となっており、博士課程(PhD)では研究が中心となります。

修士課程と博士課程はそれぞれ2年、3年が標準とされています。しかし、博士課程(修士合わせて)まで終えるのに3年しかかからない人もいれば、6、7年かかる人もいます。

ちなみに、RA(Research Assistant、修士からでも可能)として雇われれば、給料がもらえます。授業料も無償になる場合が多いです。

ドイツ

ドイツの大学の修士課程(2年間)では、座学が中心となります。本格的に研究をするのは、博士課程(3年~6年)が始まってからです。

博士課程の学生は、基本的に給料(もしくは奨学金)をもらいながら研究をします(アメリカのRA制度と似ています)。

さらに、州立大学の授業料は無償もしくは格安です。

ここで紹介したことは、あくまで一般論のようなものです。希望する大学や研究室によって、待遇が多少異なると思います。

留学を実現させるために

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情報収集

留学に興味のある人は、積極的に情報収集しましょう。応募の仕方、留学先、留学費用、奨学金、現地での生活、留学後の進路など、調べることは山のようにあります。

交換留学に関する情報であれば、大学の国際科に留学体験レポートなどが置いてあるはずです。留学先での生活や留学のための準備など、役に立つ情報がたくさん手に入るでしょう。

正規留学に関する情報は、インターネットを活用して調べましょう。とくに、海外の大学院の出願要件に関しては、必ず各大学のホームページを参照しましょう。

ここでは、正規留学を考えている方に向けて、「XPLANE | 海外大学院留学総合情報サイト」、「船井財団」、「米国大学院学生会」、「はじめのすすめ」を紹介しておきます。

海外大学院への進学を考えている方へ

XPLANEは海外大学院に興味のある人に向けて作られた、留学総合情報サイトです。お役立ち情報をまとめているだけでなく、留学志望の人と留学経験者をつなげるslackも運営しています。 参考 XPLANE | 海外大学院留学総合情報サイト

博士課程の留学を考えている方へ

参考 これまでの奨学生船井情報科学振興財団

船井財団のホームページには、博士課程の留学体験がたくさんアップロードされています。出願時の状況や現地での生活といった、参考になる情報がたくさん手に入ります。

気になる人がいれば、ツイッターでフォローしておきましょう。普段の何気ないツイートがためになったりします。

アメリカの大学院への進学を考えている方へ

参考 米国大学院学生会

アメリカの大学院に通っている人を中心とする学生会のサイトです。

日本の大学で留学説明会を開いているほか、学位留学の苦楽や研究紹介などをまとめたニュースレターも発行しています。

イギリスの大学院への進学を考えている方へ

参考 はじめのすすめ

ケンブリッジ大学でPhDを取得された方のブログです。

大学の成績

大学の成績はものすごく大事です。どの程度の成績が求められるかは、希望する国・大学によって異なります。

交換留学であれば、学内選考時に大学の成績が1つの指標となります。大学ごとに成績の基準が決められているはずです。成績が基準値に達していないと、学内選考に受からない/そもそも応募できないことがあります。

海外の大学院(アメリカとドイツ)には、日本のような院試はありません。選考は書類で行われることが多く、合否は主に大学の成績と履歴書、志望動機書、推薦状で決まります。場合によっては、大学教員との面接もあります。

大学の成績はあとから変えることができません。なるべくよい成績を収めておきましょう。

もうすでに大学3年・4年という方は、ほかの部分(志望動機書や推薦状)に力を入れましょう。成績が悪くても、ほかが良ければ合格することがあります。

留学を考えている理系学生へ

留学に行かれる際は、留学先の国の常識を知ること、日本との比較、マイノリティとしての生活経験の3つを意識してみてください。新しい発見や視点が得られるはずです。

それから、日本のこと(食文化や宗教、音楽、大学生活に関することなど)はある程度頭に入れておきましょう。思わぬ場面で日本の文化について聞かれたりします。

最後に、”留学したいな”と思っている人はすぐに行動に移しましょう。留学は自分が行きたいと思った時に行くのが一番いいです。

もたもたしていると、その機を逃してしまいますよ。

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