海外の大学って実際どうなの?
日本の大学とどう違うの?
といった疑問を解消すべく、やまとかんじさんが対話をしながら、2人の知識・経験を共有していきます。読者の層は高校生・大学生あたりを想定しています。(対話形式にしているのは、読むハードルを下げるためです)
ー2人の簡単な自己紹介ー
やま
関西大学を卒業後、ミュンヘン工科大学の大学院へ。
大学4年生を休学して、シアトルに1年間留学。
学部時代の専攻は機械工学。院では計算力学
かんじさん
遠山寛治
名古屋大学を卒業後、同じ大学の大学院へ。
現在はミュンヘン工科大学に交換留学中。
専門は信号処理(インタラクションなど)。
理系学生でありながら、サックスが吹ける
株式会社Sonoligoの代表取締役
目次
日本の大学の特徴

それじゃあ、2人で日本の大学について思うことを口にしていこうか。ぼくの方から行くね。
まず、日本の大学は入るのが難しいね。難関大学に行こうと思うと結構勉強しないとダメだよね。その代わり、一回入っちゃうと卒業までかなり簡単にたどり着ける。
あとは、国公立大学か私立大学かで特色が全然違うと思う。国公立大学は学校の勉強ができる人が行くところだよね。言い方悪いかもしれないけど、価値観が似ている学生が多いなぁと思う。
逆に、私立大学にはいろんな人がいるイメージがあるね。たとえば、ぼくが通っていた関西大学とかだと、ボンボンの子もいるし、ぼくみたいに庶民一般の子もいるし、内部進学できましたっていう子もいる。
そうだね。日本の大学はかなり偏差値至上主義だよね。当日のテストで点が取れるかどうかが1つの基準だからね。そして、大学のランクが就職活動に大きく影響をおよぼす。
国公立大学のよいところはやっぱり授業料が安い点だね。理系文系関係なく一律だし。ぼくは早稲田大学も受かっていたんだけど、授業料が高かったからやめたよね。とくに私立の理系学部だと、授業料が国立の2~3倍するから。
私立の大学だと色々あるよね。頭が良い学生もいるし、お金持ちの学生もいる。入試でよい成績をとったら特待生になれるよね。そうなったら、かなり安くで大学に通える。
今話したことって、日本人からすると当たり前なんだけど、海外に出てみるとそうじゃなかったりする。
そうだね。日本では当たり前のことでも、海外に行くと全然違ったりするからね。
私立大学の学費が高いのは本当だね。ぼくが大学に通っていた時は、授業料だけで1年に150万ほど払っていた。これが国公立大学だと、1年で50万強になる。
日本の大学にはもう1つ、”自分の時間がとりやすい”っていう大きな特徴がある。ぼくは理系の学生だけど、4年生になって研究室に入るまではわりと自由な時間があったんだよね。だから、バイトとか英語の勉強する時間が十分にあった。
そう考えると、自分の自由な時間を有意義に使える人にとっては、日本の大学はよいところだと思う。
ぼくは大学4年間を通して専門科目と英語の勉強に力を入れていたから、今こうして海外の大学院で学べているってわけ。もし何も考えずにダラダラ過ごしてたら、今ごろ大変なことになっていたと思う(笑)。
結局のところ大学4年間って、良くも悪くもその後の人生に大きく影響をあたえるよね。
海外 (ドイツ・アメリカ) の大学の特徴

じゃあ次は、ドイツとアメリカの大学について話していこうか。まずはドイツから。
ドイツの大学は、入るより出るほうが難しいね。
それから、高校卒業してから半年~1年くらいゆっくりして大学に入るってこともよくある。海外に行ったりみたいな感じで。だから、日本みたいな”高校⇒大学⇒就職”っていう絶対的な流れはあまりないよね。
実は、ドイツでは小学校の高学年の時(日本で言うなら小学5年にあがる時)に進路振り分けあって、大学進学コース(ギムナジウム:ドイツの中高一貫校)か職業訓練校(RealschuleやHauptschule)を選択する。
つまり、大学に行けるかどうかが早い段階で決まってしまうってわけ。
もともと大学に進学する人の数が絞られているから、ドイツの大学(特に私立大学)って数が少ない。ちなみに、ドイツの州立大学は学費がものすごく安いよ。たとえばミュンヘン工科大学だと、半年で15000円くらいですむ。その分、所得税は高いわけだけど(年収700万円ほどで42%)…
日本 | アメリカ | ドイツ |
2016年度 | 2013年度 | 2014年度 |
国公:194校 | 州:1625校 | 州:292校 |
私:924校 | 私:3099校 | 私:135校 |
ドイツの大学の数は、日本のそれとくらべて少ないね。日本だと、子供の数がどんどん減ってるのに大学(特に私立大学)の数が増えてる、なんてよく分かんないことが起きてるよね(笑)。
あとやっぱり、ドイツの大学は出るのが大変だね。なんせ、同じ試験を受けられる回数(よく聞くのは2、3回)が決まっているからね。下手したら、必修科目の試験が一生受けられなくなくなる。そうなると、退学するくらいしかないよね。学生から学費をとっていない分、大学側(特に州立大学)は断固とした姿勢を保てるんだろうね。
ちなみに、ぼくが今通っているミュンヘン工科大学では、試験の採点が相対評価で行われることがよくある。だから、学生の成績はインフレしにくい。
この勢いで、アメリカの大学についても話していこうか。
アメリカの大学に対するぼくのイメージは”学費が高い”だね。とくに、アイビーリーグと呼ばれる大学群(ハーバード大学やイェール大学が含まれる)だと、授業料だけで年間500万円はする。とてもじゃないけど、日本人の一般家庭には手に負えないね。奨学金が取れたら話は別だけど。
ぼくは大学4年性の時に1年休学して、シアトル郊外にあるベルビューカレッジ(日本でいうとろの短大みたいなところ)に通っていたんだけど、授業料だけで年間100万は軽くかかったよね。
それから、州立の大学とかだと、州内からの学生かそうじゃないかで学費が変わったりする。シアトルにあるワシントン大学(UW)はまさにそうだった。
卒業後に就労ビザがもらえるかどうかも確認しておいたほうがいいよね。アメリカで就労ビザを取得するのは難しいとよく耳にするから。
やっぱり、アメリカの大学は学費が高いね。もちろん、奨学金があればなんとかなるけど、全員がもらえるわけじゃない。学生ローンを使って大学に通えば、卒業後に借金地獄が待ってるよね。日本の学生よりアメリカの学生の方が借金抱えてるって言われるくらいだからね。
一方で、大学院生はわりと優遇されていると聞くね。RA(Research Assistant)という制度があって、大学の研究室に雇ってもらえれば、給料がもらえる (学費は無償になる場合が多い)。
あと日本の大学とくらべたら、アメリカの大学の方が卒業するのは難しいだろうね。リベラルアーツを重視している大学なら、たくさん参考文献を読んでレポートを書くのが基本になる。
そうだね。
アメリカの大学って最初の2年間は一般教養の授業があって、そのあとに自分の専攻を決めることが多い。だから、アメリカでは他大学に編入しやすいんだよね。(王道はコミュニティカレッジ⇒州立大学)。
シアトルだと、ベルビューカレッジからワシントン大学に編入って感じになる。日本で例えるなら、短大から地方の国立大学に編入するみたいな感じかな(少し語弊はあるかも)。とどのつまり、自分が頑張ればどんどん上のステージに上がれるんだよね。
ちなみに、アメリカの大学は入るのが簡単とよく言われるけど、アイビーリーグや有名州立大学に入るのはそれなりに難しいよ (コミュニティカレッジなら簡単)。
あと、30代(中には40代)で学生の人とかも普通にいる (特にコミュニティカレッジ)。自分の学びたいことがあって、それに向かって頑張っているということが大切で、年齢がどうのこうのということはないね。そこがアメリカの大学のよいところだと思う (ドイツの大学もわりと似たような感じ)。
それから、アメリカの大学ではライティングやスピーチの授業が充実している。理系・文系関係なく、”しっかり書けて話せること”に重点を置いていると感じる。
最後に、アメリカとドイツの両方に共通していることは、大学の成績がとても重要だということ。大学から大学院に進学する時や就職する時に、成績が重要視されるんだよね。
日本の大学と海外の大学どっちを選んだらいいの

日本の大学と海外の大学に関してぼくらが思うことを口にしてきたわけだけど… ここからは、実際どっちを選んでいくべきなのかっていうのを考えていこうか。
まあ、絶対的な解はまずないよね。
自分のやりたいことがはっきりしている、将来海外で働きたいと思っているなら、ドイツやアメリカの大学はよいところだと思う。
ただ、勉強を頑張らないと簡単には卒業までたどり着けない。それに耐えられるかどうか。逆に日本の大学だと、一回入っちゃえば卒業まではわりとスムーズ。
自分のやりたいことがよくわかんないやって感じだったら、日本の大学にしといた方が無難だとぼくは思う (日本なら大学の専攻と違う職種に就くことがわりと可能)。ぼくみたいに、日本の大学を出て海外の大学院に進学することもできるし。
結局のところ、個人がどう思うかだよね。
うん。ドイツに来て思ったんだけど、ドイツの学生って勉強に明け暮れてるよね。ドイツの学生見てると、授業終わった後にご飯食べに行こうとかクラブ活動しようみたいなことがほとんどないもんね。そういった環境を自分が求めるかどうか。
あと、日本の公立高校から海外の大学にいきなり入るのって難しいよね。どうしても言語の壁が立ちはだかる。入ったとしても、その後がしんどいと思う。
そもそも論だけど、大学に行く必要があるのかってところも考えた方がいいよね。
そうだね。一昔前の日本とはもう状況が違うからね。日本の有名大学に行って、大手企業に就職すれば人生安泰みたいな考えは神話になりつつある (終身雇用がこの先ずっと続く保証はない)。
ぼくらの世代って年金もらえるかもわかんないし。30年後の日本がどうなってるかなんてわかんないからね。
だからといって、大学卒の肩書が意味ないことはないし、単に海外に行けばよいというわけでもない。
そうだね。大学に行くかどうか、もし行くならどの大学・専攻を選ぶのか、しっかりと考えた方がいいね。でも日本の小中高では、自分の頭で考えて行動することは基本的に教わらないからね。これだと本末転倒だね(笑)。
あと、何かに挑戦するときはプランBがあった方がいいね。最初から1つに絞っちゃうと後から変更がきかないからね。
そうだね。プランBはあった方がいいと思う。
それから、自分の頭で考えるにはいろいろと経験することだね。自分がどう思ったか、どう感じたかを忘れないこと。そこから次につなげていく。そういった意味では、海外大学進学はよい選択肢だと思う。
海外の大学についてもっと知りたい方へ
ここまで日本の大学と海外の大学についていろいろとお話してきましたが、そのほとんどは個人的な経験によるものです。
海外の大学についてもっと知りたい方、高等教育に関する深い考察が気になる方は、以下の本を手に取ってみてください。日本の大学と海外の大学の違いに関して、多角的な視点が得られると思います。
アメリカの大学・ニッポンの大学
アメリカと日本の大学で教鞭をとった苅谷剛彦さんが、日米の大学を比較した本。
日米の大学、それぞれの特徴と問題点は何か。日本の大学はアメリカの大学のどこを見習えばよいのか。日米における、大学までの道のりの違いとは。教育と文化、市場との関係とは…
アメリカの大学と日本の大学の違いが、手に取るようにわかる1冊。
イギリスの大学・ニッポンの大学
イギリスと日本の大学で教鞭をとった苅谷さんが、日英の大学を比較した本。グローバル化時代の大学論の2冊目。
オックスフォード大学における伝統の制度、”カレッジ”と”チュートリアル”とは。そこから見えてくる日英の大学の違いとは。そして、それぞれの社会における、大学教育の役割と問題点とは…
イギリスの大学と日本の大学の違いを学べるだけでなく、大学の在り方について考えさせられる1冊。
アメリカの大学の裏側
アメリカで教師を務めているアキ・ロバーツさんが、タイトルの通りアメリカの大学の裏側に迫った本。
大学ランキングの裏事情。テニュア制度(終身雇用制度)の利点と問題点とは。大学の授業料が年々上がっている理由、奨学金制度について。そして、大学の価値とは。
アメリカの大学が抱えている問題、それを取り巻く環境がよくまとめられている1冊。
宇宙を目指して海を渡る
大学院からMITに留学した小野さんが、そこでの学び・経験をつづった本。
世間がいう「グローバル人材」になるための留学でよいのか。若者が海外で経験を積む価値とは何なのか。アメリカの学生が必死に勉強する理由とは。そして、自分の夢を追うとはどういうことなのか…
著者の夢に対する熱い思いが伝わってくる1冊。